ウクライナの教会からの報告(私訳)An Update from Ukraine – Translated into Japanese

背景 Background

ロシアによるウクライナ侵攻から一か月、砲爆撃の後の悲惨な様子や避難民たちの哀れな姿に接しない日はないと思います
現地の霊的な兄弟姉妹たちはどのような思いで戦時下を生きているのでしょうか?
It’s been one month since our news has been full of heart-wrenching scenes from the Russian invasion of Ukraine.
How have our spiritual brothers and sisters been coping?

信仰者の目から見た現地の状況を垣間見ることができる、貴重な記事に接しました
キエフのウクライナ福音主義改革派神学校(文末注参照)で新約聖書学講師を務めるヴァレリー・ザドロジニ牧師によるAn Update from Ukraineという記事です 信徒向けの改革派神学教育に50年以上取り組んできた米国の団体Ligonier Ministriesが発行している月刊誌Tabletalk Magazineのウェブサイトに、2022年3月17日付で掲載されています
I found a precious article the other day on the website of Tabletalk Magazine, published by Ligonier Ministries. It’s called An Update from Ukraine, dated March 17, 2022 and written by Pastor Valery Zadorozhnyy, New Testament lecturer at Evangelical Reformed Seminary of Ukraine in Kyiv (see Note below).

原文は以下のリンクをクリックして下さい
Link to original article below:

Tabletalk Magazineは現時点において日本語では発行されていませんので、この度Ligonier Ministriesから承諾を頂いた上で私訳を試みました 以下、共有いたします
Tabletalk Magazine is currently not available in Japanese, so I sought and received their permission to publish my translation which I am sharing with you below. Please feel free to share with your Japanese-speaking friends.

なお、次の点にご留意下さい:

  • 原文記事に対する著作権はLigonier Ministriesにあります
  • 以下に掲載する日本語訳に関する全責任は、当ブログ主にあります
  • 従って、公表される作品等の中で以下の訳文を引用される場合は、原文の出典のほか、当ブログに記載された訳文である旨を明示して下さい
  • なお、ロイヤルティーその他の利得を意図したものではありませんので、以上の点をお守り頂ける限り事前の許諾を求める必要はありません

Please note the following:

  • The copyright to the original article belongs to Ligonier Ministries.
  • The owner of this blog is solely responsible for the Japanese translation shown below.
  • Therefore, if you are citing this Japanese translation in any published work, please cite the original source as well as this blog page.
  • No need to contact this blog owner to seek permission, as long as you observe the above. I do not seek to receive royalties or profit in any other way from this translation.

以下、本文 Body Below

親愛なる兄弟姉妹の皆さん

私はいま、比較的平穏なオデッサにいます。今のところ、空襲警報が鳴ることは稀です。2~3分前、海の方から銃声が聞こえてきました。私の母がいる家から遠くない民家にロケット弾が落ちましたが、ありがたいことに爆発はしませんでした。ほかの都市で起きていることは、皆さんもニュースでご存じかもしれません。私の妻と子供たちはポーランドに避難していますので、その点について不安はありません。

ウクライナの他のクリスチャンはどうしているか?ウクライナの教会は今どのような状態か?
キエフには日々攻撃にさらされ、神の民の祈りを必要としている牧師や教会があります。その中にはキエフの聖三一長老教会のイワン・ベスパロフ牧師とその家族が含まれています(文末注参照)。キエフで牧会している別の改革派の牧師、セルゲイ・ナクル牧師は幼い息子から「お父さん、プーチンに殺されたら天国に行けるのかな?」と問われ「もちろん、天国に行くよ」と答えたと知らせてくれました。

この混乱の中、当地における教会の状態を要約すれば「祈り」「主への全面的な信頼」「最後まで戦う覚悟」と表現できるでしょう。ウクライナの人々は誇りに満ちていますが、同時に主の御前における謙遜も保たれています。何故なら、私たちクリスチャンは我が同胞が神の御前に無罪な存在ではなく、悔い改めと主イエス・キリストへの信仰を必要としていることを知っているからです。昨日、私は我が国の大統領が神への信仰を明確に言い表し、神が必ず裁きをもたらされることを宣言するのを初めて耳にしました。大統領は神への希望を口にさえしました。これは素晴らしい兆候です。しかし私たちは同時に、これが神の存在に対する抽象的な告白にすぎないことも理解しています。私たちは大統領が全国民と共に、まことのメシアであるイエス・キリストにあって神を知るようになることを祈ります。

私たちは祈ります。私たちは奇跡を必要としています。ウクライナの軍隊と市民は侵略者に対して実に英雄的な抵抗を続けています。私たちはこれまでになく同胞を誇りに思っています。私たちは西側諸国が武器供与・経済制裁・難民支援という様々な形で支援してくれていることに感謝しています。しかし同時に、敵に打ち勝つためには奇跡が必要であることも私たちはよく承知しています。ロシアの戦力は依然として強大であり、プーチン大統領はなお多くの兵隊を死へと追いやることができます。そして彼は核兵器を持っているのです。私たちの希望はただ神にのみあります。いま直面する脅威に持ちこたえ、国の壊滅を避けるには奇跡が必要なのです。

私たちは祈ります。そして、私たちは戦う覚悟を持っています。従来平和主義の立場をとってきた教派にあっても、平和主義を貫こうとする者は日に日に少なくなっています。年齢を問わず、多くの兄弟たちが軍隊や国民義勇隊を志願し、決死の戦いに参加しています。彼らは決して、ロシア人を憎んでいるからそうしているのではありません。我が国土、子供たち、そしてまことの唯一なる神を信じ礼拝する自由をはじめとする自由―私たちが大切にするものを守るには、今はこうするほかないのです。

ウクライナのクリスチャンにとって「悪を憎みつつ、凶悪な犯罪を犯す敵をいかに愛するか」という問題は特に切実なものになっています。これはもはや、抽象的な思惟で済まされるものではありません。私たちの内に憎しみが沸き上がるとき、私たちは信仰者として敵を赦し愛さねばならないことを憶えます。特にこの局面において「神の正しい裁き」と「主の十字架」というふたつの真実が重みを持って迫ってきます。私たちは神が裁きを下されるという真実に慰めを見出します。神は悔い改めようとしない敵に、我々にはとてもできない方法で報復をお与えになります。しかし同時に、私たちの心はカルバリーの丘に立つ十字架の前に謙遜にされます。敵と同様、私たちもまた神の怒りに値する者ですが、神はその御子の血潮によって私たちをご自身と和解させられました。私たちは他の全ての人と同様、悪魔の力の下にありましたが、神はキリストの血潮によって私たちを贖い出して下さったのです。

私たちはキリスト者としてプーチンの戦争がもたらす流血の実を鮮烈に目撃しつつ、ロシア人の多く(全員ではありませんが)がプーチンを支持していることに愕然としています。私たちキリスト者は、真実を偽りで踏みにじり、信じたいことを信じる傾向が堕落した人間の性質の一部であり、私たち自身も例外ではないことを知っています。だから私たちは敵が悔い改めることを通じて、神が彼らを悪魔の詐術から解き放たれるよう祈ります。

私たちはこの戦争に勝利すると確信します。私たちは、主の十字架とご復活が悪を打ち破られることを知っています。敵が私たちに対して何をしようと、神が私たちをキリストと結んで下さったので、私たちの体が死からよみがえることを知っています。だから私たちは、主の勝利を喜び祝います。最も重要な戦いは既に終わっており、最も強大な敵は十字架によって既に倒されたのです。

親愛なる兄弟姉妹の皆さん、どうか私たちのためにお祈り下さい。この苦難を耐え抜き、その後敵を赦すことができるようお祈り下さい。私たちの希望は主にのみあります。預言者イザヤがかつて「馬は肉なるものにすぎず、霊ではない」(イザヤ書31章3節)と語ったことを、私たちは忘れていません。戦車や軍用機は鉄の塊にすぎませんが、まことの勝利は聖霊がもたらすものです。
「苦難の中から主を呼ぶと 主はわたしに答えてくださった
主よ、わたしの魂を助け出してください
偽って語る唇から、欺いて語る舌から」(詩編‬ ‭120:1-2‬)

注 Notes

ウクライナ福音主義改革派神学校:アメリカ長老教会(PCA)などの支援を受けて2000年に設立
PCAの海外宣教部門Mission to the Worldウェブサイトの紹介記事より
Brief intro of Evangelical Reformed Seminary of Ukraine, from official website of Mission to the World (PCA missions organization):
https://mtw.org/projects/details/evangelical-reformed-seminary-of-ukraine-ersu

キエフの聖三一長老教会ウェブサイトより「私たちの信仰」(英語)
Holy Trinity Presbyterian Church of Kiev – Statement of Faith:
https://holytrinityua.blogspot.com/p/what-we-believe.html

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